右近家は幕末には日本海五大船主の一人に数えられた北前船のオーナー。北前船とは関西と蝦夷地の間で日本海側の各港を巡りながら往復した廻船。
旧本宅が資料館となっているが、その庭園に砲弾が置かれている。

▲砲弾　径：205ミリ、長：500ミリ　　詳細不明

右近家の当主は代々、右近権左衛門を名乗り実業家として名を馳せた。明治期には日本海上保険(現在の日本興亜損保の前身)を設立している。
日露戦争で民間から徴用され旅順口閉塞作戦に参加した「福井丸」は右近家の持ち船であった。
そのようなことから、この砲弾が海軍から譲られたのかも知れない。

本宅背後の山に、西洋館と山荘があり、「山荘展示館」には福井丸や広瀬中佐に関する資料が展示されている。

大正13年、海軍の特務艦「関東」がこの地で難破、近くの糠海岸に慰霊碑がある。
「関東」は元ロシアの運送船「マンジュリア号」で、日露戦開戦直後に日本が拿捕、特設巡洋艦として日露戦争を戦った。その後、他の艦艇を支援する工作艦となっていた。

慰霊碑は、大正14年8月に付近の山腹に建てられたが、いつの頃か現在地に移された。上は建立当時の写真。

慰霊碑の横に事故の様子を描いたレリーフがある。「関東艦遭難の記」が添えられている。

関東艦遭難の記

　特務艦「関東」は、大正13年12月10日舞鶴入港の特別任務を受けて、山口県徳山港を出港し翌11日山陰沖にさしかかった。その頃より暴風雪に遭遇し激浪と吹雪の中を航行すること十余時間、艦はその進路を誤り舞鶴軍港沖をはるかに通過して12月12日午前8時5分当地糠浦海岸現在地右手海岸より約150メートル沖合の岩礁に乗上げ座礁した。
　島野団一艦長以下207名の乗組将兵は万策を施したがその功、奏せずやがて荒れ狂う激浪のため艦中央から折れ、艦首前半は沈没した。その間全将兵一糸乱れず、上司の命に従い、怒濤逆巻く中で、敢然と各々の持場を死守し、ついに森下与一郎中佐以下97名の将兵が壮烈な殉職をとげられた。
　一方その急をきいた地元糠浦の村人をはじめ、村内の老若男女は現場に駆けつけ身の危険をも顧みず救助作業に挺身した。特に地元糠浦婦人の活動はめざましく、陸岸に漂着した瀕死状態の将兵を救いあげ、猛吹雪の中で、母性愛の一念に燃え酷寒の中、肌身をもって寒さも恥じらいも忘れ、一心に抱きしめその体温で数多くの魂をよみがえらせた純真素朴な救助活動は、鬼神も泣く糠浦婦人の美談として、今尚、讃えられている。
　この痛ましい関東艦の遭難を後世に残し永久に殉職者の英霊を弔うため、さきに慰霊碑を建立し、この度遭難と救助活動のレリーフ板を作成しこの史実を後世に永く伝えるものである。
　　　　平成6年9月　福井県南条郡河野村

［帝国陸海軍現存兵器一覧］リストへ